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トースト

トースト

細川亜衣(料理家)

料理家の細川亜衣さんは、毎日トーストを食べている。一人暮らしのときも、結婚してからも、子どもと食卓を囲んでも。定番のバタートーストからシナモントーストまで、細川家のとくべつな朝食を紹介します。撮り下ろしの写真をそえて、おいしい1冊ができあがりました。

本の情報

書名
トースト
著者
細川亜衣
企画編集
櫛田 理
制作
株式会社EDITHON
デザイン
佐伯亮介
造本設計
田中義久
販売協力
無印良品 MUJIBOOKS
印刷製本
図書印刷株式会社
ISBN
978-4-910462-01-1
定価
1980円(本体1800円+税)
刊行日
2021年3月1日 初版第1版発行
発行元
図書印刷株式会社 BONBOOK

細川亜衣

インタビュー
細川亜衣さんに聞きました

トースト好きは、いつからですか?

子どものころからパンの朝食が多かったですが、一人の秘かな楽しみとして「トースト」を焼いて食べはじめたのは、25歳くらいから。ちょうど一人暮らしを始めたころでした。トースターがなかったので、ガスオーブンで焼いてみたら、実家で食べていたのとはまったく別物で、驚くほどおいしかった。その後、焼き方は日々変遷していますが、トースト好きは変わりません。

トーストを食べる頻度は?

まったく食べない時期もありますが、元気なときは、ほぼ毎日。いつも焼いたら、まずはバター。そのままの日も多いし、日によって塩だけ、砂糖だけ。たまにジャムやはちみつをほんの少し。飲み物とトースト。それ以外は何も食べない。朝昼兼用なこともあり、躊躇せず、1枚のトーストを食べ終わるまで、何度もバターをお代わりしてのせます。かさっとしたパンが苦手なので、必ずしっかり蒸して、芯までふんわり、しっとりさせてから、表面だけをこんがり焼きます。そして、バターを隅々まで染み込ませた上に、さらに冷たいバターをのせる。じゅわっと染みたところと、舌の上でひんやり当たるところのギャップを味わうのがいちばんの楽しみです。でも、1枚を焼くのに気合が入りすぎて、家族にはわかってもらえない。だからトーストは必ず一人で食べます。でも、ずっとトーストを敬遠していた娘が今年に入って急にトースト党になったのは、うれしいことです。

お気に入りの食パンを教えてください。

いちばんよく食べるのは、浅草の老舗ベーカリー「ペリカン」の角食パン。友人が東京から送ってくれます。それから、京都の友人に教えてもらった河原町今出川の「アルチザナル」の角食も、香り高く、とろけるような食感がとてもおいしい。それぞれタイプが違うのですが、どちらも甲乙つけ難く、好きです。

『トースト』の写真はすべて細川さんの撮り下ろしです。
いつからご自分で?

東京で料理教室をしていたころに、一眼レフで撮った写真を生徒さんにお分けしていたのがはじまりです。料理本や雑誌の撮影は、ずっと信頼する写真家の方に一任してきましたが、料理は生もので、作品ではない。それを追いかけるには、0コンマ何秒でファインダーに収める気迫がいるんです。とはいえ、私が収めたいと思うポイントを現場で自分以外の人に伝えるのは難しい。私には写真の技術はありませんが、気迫だけはある。料理の写真は“いい写真”でなくてもいいのかな、と気づいたら、いい意味で力が抜けました。この『トースト』もそうですが、料理の写真は、自分で撮る機会が増えてきました。

いちばん好きな食べ方は?

やっぱり定番のバタートースト。焼きあがる直前に有塩バターを薄く切って全面にのせ、余熱で染み込ませ、さらにごく薄く切った冷たいバターをのせて、上のバターが溶けないうちに食べる。これが基本です。そこに、粗糖をふるのが好きです。粗糖も産地によって風味が違うからおもしろいですよ。娘はそこにきなこをかける“きなこトースト”、私は各国で買い求めたシナモンスティックを削る“世界のシナモントースト”が最近は気に入っています。

これから挑戦したいトーストとは?

食パンは、ふつう切って食べるものですけど、一斤まるごとの角食を、切らずに焼く。焼けたら、パンの左右を引っ張って中に冷たいバターを落としてかじりつく。これは絶品でしょう。でも、いちばんは、やっぱりいつものバタートースト。毎日焼いていても、本当においしいと思えるくらいに焼けることはほとんどなくて、だから、いつものトーストをこれ以上ないくらいにおいしく焼く。それが私が挑戦したいことです。

著者プロフィール

細川亜衣

ほそかわ・あい 料理家。世界の様々な国へ料理の旅を続けながら、家庭の台所、食堂の厨房など、土地に根ざした飾り気のない日常を料理から学ぶ。2009年より熊本在住。2021年春、『料理集・定番』(アノニマ・スタジオ)、『旅と料理』(CCCメディアハウス)、『taishoji cook book』(晶文社)を刊行。